【台湾についての考察1】

以前から台湾については独自の関心を抱いていた。本土の共産党政権にも勝るとも劣らない過酷な独裁政治(秘密警察が多様されたり、軍隊に国民党の「政治将校」がいたり、多くの企業・銀行が国民党の支配化だったり、挙句に1949年の台湾支配開始以来1987年に到るまで戒厳令を敷きっぱなしにしたりして、どっちが「共産主義国家」か分らないとまで言われた)が行われてていたものの、他国の占領を受けることもなく独自に民主化を行った過程には、日本人として強く興味を抱いたものだ(日本国民は他国に軍事占領されなければ「民主化」できなかったのだから)。
余談だが、同様の理由で私は大韓民国にも強い関心を抱いている(この国も国民の「自力」で民主化を勝ち取っている)。

また、台湾と海を挟んで対峙する「大陸」側の政権のことを知るためにも、やはり台湾に注目せざるを得ない。
在野の著名な中国学者竹内好」(1910-1977)は、中国本土のことを知るためには台湾を知らなければならない、と常々言っていたという(竹内氏と親しかった評論家佐高信氏の複数の著書より)。一つのものを本当の意味で「知る」ためには、常にそれと対になるものにも目を配らなければならないという信念からの発言とのことである。
私も同感である。事実上、中華人民共和国において共産党に対する「野党」の存在がない現状では、共産党の政権に「敵対」しているという点に着目すれば、台湾の存在こそが中国における最大の「野党」という見方も成り立ち得るであろう(国民党の場合は大陸と台湾の一体性を主張する側、新民党の場合は独立派という違いはあるが)。大陸側としても、最大の国家的課題が「台湾の統一」であると提唱するならば、必然的に台湾の状況に常に対応した政策をとらなければならないから、台湾の動向を観察することで、ひるがえって大陸側の内部事情も垣間見ることが可能になろう。

ことほど左様に台湾という存在は、私の関心を引き付け続けている。